食レポの「やわらか〜い」は 止めましょうよ【味を教えて下さい】
テレビのグルメ番組やワイドショー、夕方のニュース番組を見ていると、飲食店が紹介されてレポーターや出演者が料理を食べ、感想を話す場面がよくあります。いわゆる「食レポ」のシーンです。
その食レポで、かなりの確率で聞く言葉があります。それが「やわらか〜い」という一言です。特にお肉を食べた瞬間や口に入れたときに反射的に出てくる定番フレーズといってもいいかもしれません。
ただ、見ている側としては「またその言葉か」と感じることもあります。料理の紹介なのに、食感の話だけで終わってしまい、どんな味なのかがよくわからないことも多いです。
- なんで「やわらか〜い」なの?
- 味を表現して教えてほしいのに
- 味がわからないの?
そんなモヤっとした気持ちを持ったことがある人もいるのではないでしょうか。
食べた感想で味に触れず、食感だけを伝えてしまうと、場面によっては少し気まずく見えてしまうことがあります。特に、料理に詳しい人や作り手の前では、「他に言葉が出てこないのかな?」と思われてしまうこともあります。
味の表現ができないと、ちょっと恥かしい思いをすることになります。
このページでは、「やわらか〜い」がなぜ恥ずかしい思いをするのかを、できるだけわかりやすく解説していきます。
このページを読めば料理を食べた感想で「やわらか〜い」はほぼ使わなくなります。そして「やわらか〜い」を使わなくなることで恥ずかしい思いすることがなくなります。
「やわらか〜い」は 止めましょうよ

食レポを見ていて、「うーん、ちょっと惜しいな」と感じる瞬間があります。料理に関わる仕事をしている人なら、同じようなモヤっとした気持ちを持ったことがあるかもしれません。
その場面というのが、料理を口に入れた最初のひと言が「やわらか〜い」で終わってしまうときです。
もちろん、実際に柔らかい料理なのだと思いますし、その感想自体が間違いというわけではありません。
ただ、料理を作った人の立場からすると、やっぱり一番聞きたいのは味の感想です。
見ている側も「どんな味なのか」「本当においしいのか」を知りたくて番組を見ています。
だからこそ、まずは素直に「おいしい」「うまい」と伝えてもらえると料理を作った側はうれしいのです。
そのあとに、なぜおいしいと感じたのか、どんな味が印象に残ったのかを話してもらえると、料理の魅力がぐっと伝わります。

さらに、「どんな工夫をしたのか」「何にこだわったのか」を料理人に聞いてもらえると、その一皿に込められた想いまで伝えられます。
そんなやり取りがあると、食レポはもっと楽しく、見ごたえのあるものになります。
「やわらか〜い」は味ではなく食感です。
料理を作っている人は第一に味を追求して料理を作っています。食感を全く無視しているわけではないんですが、食感より味の感想を聞きたいし、多くに人に自分が作った料理の味を知ってもらいたいと思っています。
なので、そういう食レポを聞くと料理を作った人がかわいそうに見えます。テレビ番組の制作側もいろいろ事情はあると思いますが、ちょっとお粗末な食レポが多いですね。
「やわらか〜い」ってけっこうな確率で聞きます。
味を表現できないと恥ずかしい思いをすることも

食に強い関心を持つ会社の上司が、有名で評判の高いお寿司屋さんへ部下を連れて行ってくれたとします。特別な機会として用意されたのは、大間産の本マグロです。
上司が期待を込めて「A子さん、どうかな」と感想を尋ねます。その問いかけに対して返ってきた言葉が「やわらかいですぅ」だけだったとしたら、場の空気は少し変わってしまいます。
目の前で寿司を握っていた板前さんが、一瞬手を止めたように見えたとしても不思議ではありません。その沈黙の中で、上司も言葉を失い、「あぁ、そうかぁ」とだけ返す場面が思い浮かびます。

おそらく上司は、そのやり取りを通して「料理の味や良さが伝わっていない」と感じてしまうでしょう。結果として、次に同じお寿司屋さんへ連れて行こうという気持ちにはなりにくくなります。
このような場面からもわかるように、料理の感想は食感だけで終わらせず、味や印象を言葉にすることが大切です。ひと言添えるだけでも、相手に与える印象は大きく変わります。
「やわらかい」は「美味しい」という風潮

「やわらかい料理はおいしい」という考え方は、たしかに広く浸透しています。特に食肉の中でも、牛肉はやわらかさが評価されやすい食材です。一般的に、やわらかい牛肉ほどおいしいと思っている人は多いでしょう。
しかし、実際には「やわらかさ」と「おいしさ」は必ずしも一致しません。食感だけで味の良し悪しが決まるわけではありません。
その違いがわかりやすい例が、鶏肉です。普段食べている一般的な鶏肉(ブロイラー)と、地鶏と呼ばれるブランド鶏を比べると、多くの人は地鶏のほうがおいしいはずだと頭では思います。

ところが、実際に食べ比べてみると、いつも食べ慣れているやわらかい鶏肉のほうを「おいしい」と感じてしまう人が少なくありません。地鶏を初めて食べた人の中には、「かたい」と感じる人も多くいます。
地鶏は筋肉質で、肉質がしっかりしているのが特徴です。筋肉量が多いため、肉の色もやや赤くなります。地鶏のおいしさを理解している人は、地鶏を「かたい」とは表現しません。
「歯ごたえがある」「弾力がある」といった言葉を使います。
地鶏は噛めば噛むほど、肉のうま味が口の中に広がります。その噛みごたえとともに味わう深いうま味こそが、地鶏ならではのおいしさです。
食生活の変化「やわらかい=おいしい」

前の章で触れたとおり、今の時代は「やわらかい=おいしい」と感じやすい価値観が広く定着しています。その流れを強めている要因のひとつが、テレビの食レポです。料理を口にした瞬間に「やわらか〜い」という言葉を連発している場面を、日常的に目にします。
現代は食材の種類も料理の選択肢も非常に多く、あえてかたい食べ物を選ばなくても困りません。調理技術や加工技術が進み、誰でも食べやすいやわらかい料理が簡単に手に入る環境が整っています。

その結果、日本の食卓には自然とやわらかい食べ物が増えています。日常的にやわらかい食感に慣れているからこそ、「やわらかい」という感想が、そのまま「おいしい」という評価につながりやすくなっているのです。
今までに食した経験

食レポで「やわらか〜い」という感想が出やすい理由として、「やわらかい=おいしい」と感じる人が多い点について触れてきました。ただ、その背景には、さらに根本的な原因があります。
大きく関わっているのは、食レポをする人自身の食経験です。これまでにどんな食事をしてきたかによって、味の感じ方や表現の幅は大きく変わります。
たとえば、普段からファーストフード中心の食生活を続けている人は、食そのものに強い関心を持たず、似た味の料理ばかりを食べている傾向があります。いわゆる偏食の状態です。
偏食傾向があると、味の引き出しが少なくなり、料理の違いを言葉で表現することが難しくなります。食べた経験が限られているため、比較の基準を持てないからです。
たとえば、今までタンシチューを食べたことがない人が、食レポで初めてタンシチューを口にし、感想を求められた場面を想像してみてください。多くの場合、とっさに出てくる言葉は「やわらか〜い」でしょう。
過去に食べた経験がなければ、味を比べることができません。一方で、タンシチューを作った料理人からみれば、「やわらかいのは当たり前だよ」ってなります。本当に伝えてほしいのは、味わいや香り、余韻といった部分なのです。
基本の五味

味には、「甘味」「旨味」「塩味」「酸味」「苦味」という五つの基本味があります。
料理を味わうときに、この五つのどれが強く感じられるのかを意識するだけで、味の受け取り方が大きく変わります。
たとえば、「甘味がやさしい」「旨味がしっかり感じられる」「塩味がちょうどよい」といったように、感じたポイントを言葉にしやすくなります。漠然と「おいしい」と感じていた味も、何がそう感じさせているのかを整理して伝えられるようになります。
五つの基本味を知ることは、特別な知識や経験がなくてもすぐに始められます。日常の食事で少し意識するだけでも、料理の味を具体的に表現できるようになり、食事の感想を伝える場面で言葉に困りにくくなります。
味の構成を理解することは、料理をより深く楽しむための第一歩です。
食レポの「やわらか〜い」は 止めましょうよ:まとめ
料理の感想として「やわらか〜い」だけを口にしてしまうと、場面によっては気まずい思いをすることがあります。そのため、食レポや食事の場では「やわらか〜い」という言葉に頼りすぎないことが大切です。
一方で、味をきちんと表現した感想を伝えられるようになると、会話が広がったり、相手からの印象が良くなったりする場面が増えるかもしれません。料理の感想は、工夫次第で自分の評価を高めるきっかけにもなります。
そもそも味とは、舌で感じるものだけではありません。食感や舌触り、料理の温度、立ち上がる香り、食材の色合いなど、五感で感じた要素すべてを含めたものが味です。
その中の一部分だけを切り取るのではなく、感じた印象を言葉にすることが、伝わる感想につながります。
できることなら、テレビ番組を制作する側も、食レポを任せる人選をもう少し工夫してほしいと感じます。そうすることで、取材を受けたお店も、番組を見ている視聴者も、どちらも満足できる内容になるはずです。
全国放送で「やわらか〜い」とだけ伝えてしまった人は、ある意味で気の毒とも言えます。
テレビは影響力が大きいため、その一言が強く印象に残ってしまうからです。

